介護職としての私

特別養護老人ホーム箱根老人ホーム、高齢介護 10年目

あの時できなかったことを、今この時、この人のために。

杉浦有紀 さん

施設
特別養護老人ホーム 箱根老人ホーム
職務
高齢介護
経歴
大学・人間関係学部人間福祉学科卒業後、新卒で入職
現在10年目。主任

この職業を目指したきっかけは?

もともと「人を相手にする仕事」として福祉や保育に興味を持っていました。
高校生の頃祖父が入院し、祖父の世話をしていくことを通じて、人に寄り添う仕事をしていきたいという思いを強くし、大学では社会福祉学科の介護福祉専攻に進みました。

今の職場を選んだのは?

大学では介護福祉士取得のため、特別養護老人ホームや障害者福祉施設などで実習をし、特別養護老人ホームでの実習が一番楽しかったというのもあって、高齢者介護の道を選びました。

箱根老人ホームには、福祉分野の就職相談会で興味を持ち、見学にきて「いいな」と思い、そのまま就職しました。ここの施設は周囲の環境のおかげで、四季の変化をとても身近に感じます。桜や新緑、紅葉などが楽しめて…雪は大変ですが、それも風情のひとつですね。

現在の仕事内容は?

入所者さんの食事やお風呂・排泄など日常生活全般の介護です。勤務形態は変則勤務になっています。

勤続10年になり、主任として後輩の指導も行っています。今はEPAの一環で働いているインドネシア出身の4人の指導をしています。指導といっても、指示をするのではなく、うまくなじめているか様子を見ながら声かけをしているといった感じです。

言葉や文化の違いがあって、早口での言葉のやりとりは聞き取りに苦労しているので、ゆっくり、はっきりとやさしい言葉で伝えることを心がけています。

※EPA:経済連携協定。日本はこの協定に基づいて、アジア諸国から看護師・介護福祉士候補者の受入れを行っています。

仕事で大事にしているのは?

気を付けているのは、入所者さんの「できること」を奪わないようにすることです。

お手伝いすることは簡単なのですが、いつもお手伝いをしてしまうと、だんだんとできることができなくなっていってしまうこともあります。見ていて、つい手を差し出したくなってしまうこともあるのですが、それを見守ることも大事な仕事です。

やりがいを感じる時は?

やりがいを感じるというか、うれしい時は、入所者さんが笑顔を見せてくれる時や、食欲がなかったり、状態がよくなかった方が元気になった姿を見る時ですね。やはり「よかった」という気分になれます。

うれしいという点では、ヘアアクセサリーを変えたときなど、小さな変化に入所者さんが気づいてくれると、ちょっとうれしいですね。自分が見ているように、相手も自分を見ていてくれるんだということがわかりますから。

10年間この職場で働き続けてきた所感は?

これまでたくさんの看取りを経験しましたが、満足のいく看取りができたと思えたことがありません。看取りを迎えた時に、「もっとああすればよかった」と思ったことが何度もあります。

看取りの経験は悲しいことですが、元気な方が目の前にいっぱいいてくれます。今生きている方たちのその時に、同じ思いを感じることがないように…もし同じことが起きた時には、あの方にできなかったことを、この方のためにやってみよう。そんな思いで仕事を続けています。

感情が揺さぶられることも多く、つらいこともあります。看取りのあとは感情を処理できないこともありましたが、親に話を聞いてもらって乗り越えてきました。話を聞いてくれる人がいることはとても大事なことだと思います。

仕事とプライベートのバランスはとれていますか?

プライベートでは、友達と食事に行ったり、ドライブに出かけたりしています。友達は、すでに現場を退いている人も含めて同じ職場の人が多くて、話も合ってリフレッシュできます。

好きなアーティストのライブにも行ったりしています。盛り上がって気分転換になります。

職場で面白かったことなどは?

面白かったというよりはびっくりしたことですが、入所者さんのお孫さんが、小・中学校の同級生だったことがありました。入所者さんに写真を見せて頂いて初めて気が付たんですが、まさに「世間は狭い」という言葉通りです。

今後の目標は?

十年間ずっとこの箱根老人ホームで働いてきましたが、このホームのこと、現場のことしかわからないので、社会福祉士の国家資格を取って仕事の幅を広げたり、もっと広い視野で物事を見られるようになりたいと思っています。

この法人は特別養護老人ホーム以外の施設も持っているので、そうした広がりを経験できる可能性があると考えています。

介護の仕事に興味がある人に一言

人とかかわるのが好きな人にはおすすめします。いろんな入所者さんがいて、昔の話を聞いたりと楽しく、面白く過ごせる仕事ですよ。

施設の人から

所長:高添尚代さん

この仕事は、尊い仕事ともいわれますが、頑張っても喪失体験も多いという側面もあります。気持ちのアップダウンが激しくなりがちな中で、杉浦さんには仕事に最後まで向き合い、立ち向かっていく覚悟がある。それが10年という時間を働いてこれた強さだと考えます。

入所者さんの看取りの数時間後に誕生会があったり、場面が急転回しても、気持ちの切り替えをしていかなければなりません。その中で仕事を続けていけるのは、自己再生ができているから…様々な経験から気づき、学習する。それをエネルギーにして、らせんのように元に戻りつつも上がっていく。杉浦さんは、そんな自己再生を繰り返し、成長させ続ける自己コントロール能力に長けています。

ここまでのキャリアと能力には自信を持ってほしい。そして、違う分野・世界を見、より多様性を手に入れ、自身をコーディネートして、これからも頑張っていってほしいと思います。


特別養護老人ホーム 箱根老人ホームのご紹介

経営主体:社会福祉法人 神奈川県社会福祉事業団

神奈川県足柄下郡箱根町宮城野58番地

電話:0460-87-0052

http://kanagawa-swc.com/hakone/

設立:昭和26年(平成7年より現法人)

定員:86人、ショートステイ4人

有数の観光地・箱根にある施設は、森と山の自然美に囲まれ、周囲は別荘地にもなっています。箱根寄木細工をイメージして設計された和風の建物は、吹き抜け構造のロビーなど、旅館やホテルと見まごうほどです。

温泉「美人の湯」利用の浴室は、温泉地・箱根ならではの施設。そのほかの施設もゆとりを持ったつくりで、窓から見える箱根の景観ともども、ゆったりした時を過ごせます。

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