専業主婦から介護の世界に飛び込んで11年。
小規模ならではの雰囲気で、家族に接するように介護をしています。
- 施設
- 特定非営利活動法人 野の花ネットワーク 通所介護事業所
- 職務
- 生活相談員、介護職を兼務
- 経歴
- 11年目
この職業をめざしたきっかけ、今の仕事・職場に就いたきっかけは?
姑を4~5年ほど在宅介護している時に「野の花ネットワーク」にお世話になったのが最初のきっかけです。当時は子どもも小さかったですし、専業主婦だったので、介護の職に就くなど全く思っていませんでした。澁谷さん(野の花ネットワークの事務統括責任者)達にお誘いをいただいて、いろいろ迷いましたが、皆さんの熱意に背中を押されてここで働くことになりました。
入職当時、子どもは高校生だったので、フルタイムではなく短時間勤務から始めました。最初は介護の仕事のことは何もわからず、施設で働くようになってからいろいろ勉強しました。今でも勉強中です。
この施設のスタッフの入職経緯は、私と同じように利用者さんのご家族だった方が多いので心強いです。皆さん、もともとは専業主婦で子育てしながら働いて、働きながら資格をとって、子育てが落ち着いてきたら、働く時間を増やしていき、常勤か非常勤か選択して続けています。働く環境としては、自分の生活スタイルに合わせて自由度のある、働きやすい職場だと思います。私よりもっと長いベテランの方も、設立当初から働いている方も多くいらっしゃいます。
今の仕事の内容は?
デイサービスの仕事をしています。「野の花」ではスタッフの仕事は担当制のような分担をしていません。仕事をパートに分けてしまうと、利用者さんの全体像の変化が見えなくなってしまいます。だからスタッフは全ての仕事にかかわりますし、すべての利用者さんにかかわります。送迎から入浴、バイタル測定、お散歩やレクリエーション。やることは他のデイサービスと変わらないのですが、やり方がちょっと違うと思います。
例えば、送迎のスタイルは、ワンボックスカーで利用者全員を一度に迎えに行くのではなく、小さな車で1人か2人の利用者さんをそれぞれのスタッフが迎えに行くようになっています。そうすることで利用者さんとの関係性がとても密になります。お家の玄関まであるいはベットまで迎えに行くことでお家の様子もわかりますし、車の中で利用者さんはお家であったことや、しんどかったことを話してくださることが多いのです。そういう時間を持つことでその方の全体を見ていくことを心がけています。
機能訓練もちょっと変わっています。もちろん普通の体操もやりますが、お洗濯物を干してもらったり、味噌汁の具を切ってもらったり、お米をといでもらったりといった生活リハビリを行っています。私達はこれも訓練だと思っています。
豆から挽いて淹れたコーヒーと
小豆から炊いた水ようかん
手作りの紫蘇ジュースとクッキー
レクの内容も、お惣菜を作ったり、お菓子を作ったりしています。利用者さんは女性の方が多いのですが、女性は圧倒的に炊事洗濯で機能が回復します。全然違います。利用者さんがお家に帰ってからも動けることが大事です。在宅生活を長く続けていただくためにも、日常動作の訓練をしていただきたいと思っています。皆がいると競争心も出て、「あの人ができるなら私も」と頑張るのです。利用者さんにとってはそれがいい刺激にもなります。 ここでは、多くても来所する利用者さんは8名程です。全体を見て、一人ひとりの利用者さんにきめ細かな対応ができるところが、小規模施設の良さだと思います。
施設にはお庭もあり、周りには自然もたくさんあって良い環境ですね
住宅街でお花を作りながら、普通の家のつもりで利用者さんに過ごしていただきたいとの想いからつくられている施設です。庭のお花やお野菜は利用者さんと一緒に育てています。育てたお野菜で料理を作ったり、それもまた楽しみです。
周辺には少し歩いただけで土の道が残っていたり、林の中に古い神社があったりと、ちょっと昔懐かしい風景があるので、毎日のように利用者さんと散歩に出かけます。みなさん歌がお好きで、散歩の途中で、歌を歌い出すんです。景色を見てふと昔歌った歌を思い出すんでしょうね。お花の名前も、部屋の中で本を見ている時はわからないけれど、自分で歩いていて花を見ると、名前を思い出して教えてくれます。五感が刺激されてとても良いことだと思います。
今の仕事・職場で大事にしていることややりがいは?
朝迎えに行った利用者さんをその状態でお家に返すことを一番心がけています。怪我をさせないなど気をつけています。そして、利用者さんが1日楽しく過ごすことを大事にしています。
一日でも長く在宅で生活いただけるように、「最後まで在宅」が私達のミッションです。
お姑さんを介護していたときと、施設での介護の違いは?
自分の家族だと24時間介護しないといけない、家族介護は終わりがないから辛いのだと思います。施設の仕事の場合は、朝から夕方までの決められた時間なので、そこで気持ちを切り替えられることが一番の違いですね。また、姑は一人ですが、施設ではいろいろな利用者さんがいますので、いろいろな方と接することができることも大きな違いですね。 だから在宅介護されている方々も、ご家族だけで抱え込まないでサービスを上手に使いながら介護をされていくのが良いと思います。
今の仕事で感じるこの仕事の専門性とは?
この施設のスタッフは『専門』ということをあまり意識していないみたいです。資格をとる時も、自分の仕事に必要だから取るという方が多いですね。
専門性というよりも、何をしたら利用者さんが喜ぶか、どういう時にいい表情を見せてくれるか、などの経験の積み重ねはあります。その厚みを沢山持っている、さらにそれを言語化できること、それが専門性という事かもしれません。知識での専門性ではなく、体験・経験から得たものが大切だと思います。
例えば、利用者さんがいやな気持ちにならない言い方を考えながらお話したり、家族に接するように対応します。そうすると情が湧くので誰か一人の方を優先してしまわないように、誰かと話していても目の端には他の利用者さんを視野に入れ気を配るなど、情とプロ目線との仕分けも専門性といえるのかもしれませんね。
仕事とプライベートの両立(ワークライフバランス)は?
今の私のプライベートの楽しみは、孫です。3歳と1歳の孫と会うのが楽しみです。今は夏休みなので、自然がいっぱいのこの秦野に遊びに来てくれます。
この施設では、スタッフの娘さんの出産の時は大変です、一大行事です(笑)。休暇や時短勤務にも協力しますし、スタッフ皆でサポートします。出産の先輩方もたくさんいますので、相談にものってくださいます。皆温かく、人柄が良いです。
職場でのこぼれ話があれば(面白かったこと、感謝されたことなど)
スタッフには料理が上手な先輩や、お裁縫が上手な先輩などがいらっしゃいますし、何より利用者さんは大先輩なのでいろいろな事をお話ししてくださり、たくさんのことを学べます。 スタッフが出産するときには利用者さんがおむつを縫ってくださるんです。認知症の方でも、その時はあっという間に縫ってくださるの。すごいなあと思います。自分の得意なことは、覚えてるんですね。その瞬間はハツラツと当時の話をしてくださいます。まるで昨日の事のように、戦後のお話もイキイキと話されるんですよ。戦争は悲惨だったと思いますが、本人達は生きることに頑張っていた。その人にとっては大事な時代なのだと思います。
何度も何度も同じ話をされるときも多いです。でもそういう時は、「あ、そうなんですねぇ」って初めて聞いたような態度で聴くと、目をキラキラさせて話してくれます。他人だから何度でも聴けるのだと思います。そういう話をするときは、本当に楽しそうなんです。だから、スタッフは女優になるんですよ(笑)。
利用者さんからは「先生」って呼ばれるんです。名前を覚えられないので「先生」って呼んでくれるんです。たまに「お姉さん」って呼ばれると、スタッフみんなが「ハイ」「ハイ」って(笑)。嬉しいですね。
施設の人から
事務統括責任者 澁谷 路世さん
彼女はとてもまじめで大変な努力家です。お姑さんの介護で彼女と知り合ったのですが、とても良い方だったので、ぜひうちで働きませんか?と、資格とか何もなくても「やろう!」と言ってスカウトしました。
介護職は誰でもできるというものではなく資質が必要だと思います。スキルの高さではなく、やはり人柄の良さが大事ですね。人柄は変えられないけど、スキルは上げられますから。
特定非営利活動法人 野の花ネットワークのご紹介
特定非営利活動法人 野の花ネットワーク
〒257-0024 神奈川県秦野市名古木402番地の2
電話:0463-80-0877
設立:1994年
「野の花」は神奈川県秦野市を中心に、住みなれたこの地域で、老いても障がいがあっても暮らしつづけたいという思いを支援するために1994年から活動を続けてきました。
1999年10月、法人格取得。
保険外サービス「地域サポート」、福祉有償運送、遊び倶楽部「げんき!野の花」、バリアフリーお出かけ支援、介護保険訪問・通所・居宅、障がい福祉サービス居宅・移動・日中一時・相談支援を行なっています。