ようこそ~訪問介護の世界へ
~ホームヘルパーと連携するケアマネジャーからのメッセージ
住み慣れた場所で、自分らしく暮らしていくことを支える
トゥ・スマイルケアセンター湯河原事業所(居宅介護支援事業所) 管理者
主任介護支援専門員 本多美弥子
居宅介護にかかわるきっかけは、病棟での高齢女性とのかかわりから
私はもともと、大学病院の看護師として、神経内科、脳神経外科、整形外科等の病棟を経験しました。整形外科の患者さんで、せっかく骨折を治しても、また転んで骨折して入院を繰り返す高齢女性がおりました。あまりにも頻回なので、ご家族に家庭環境を確認したところ、庭先に鉢植えがあって、そこで何時もつまずくんだという話を聞いたんです。すごく大事な鉢かもしれませんけど、置き場所を動かしていただいて、歩くスペースを作ってとか、日常の生活動線を整えるよう指導をして、退院してもらいました。それっきり転倒により、入院することもなくなりました。治療と日常生活が切り離されるのではなく、生活の中に医療が組み込まれて、治療後の「日常を支えるもの」になることで、患者さん自身がより主体的に、生き生きと過ごせるようになります。高齢者が住み慣れた場所で、自分らしく暮らしていくことを支えたい。丁度そのころに生まれた新たな専門職である介護支援専門員(以下;ケアマネ)として、湯河原町の街を拠点に、地域の居宅介護に携わるようになりました。
暮らし続けたいエモーショナルな街
この街には、昭和から受け継がれる“御用聞き”の文化が今も残っています。街中には個人商店がほどよく残っており、灯油を自宅まで届けてくれたり、お肉を量り売りしてくれる店があります。こうしたお店のおかげで、高齢者世帯でも、地域のさまざまな人とのつながりの中で、介護のサービスを上手く活用して暮らし続けることが出来る環境が保たれています。しかしながら、地理的には山間で坂が多く、公共交通機関も非常に限られています。要介護状態になっても住み慣れた場所で自分らしく暮らしていくには、訪問介護員(以下:ヘルパー)による支援は欠かせないものとなっています。
住み慣れた場所で、自分らしく暮らしていくことを支える
私たちの町は、2025年現在ですでに高齢化率が40%超えていますので、2040年問題が早々と来ているという実感があります。最近では、居宅介護支援の新規申請が多くなっており、転入継続も増えています。町では高齢者二人世帯や独居、特に認知症がある一人暮らしの方が増えてきています。
高齢者の生活場面では、身体面や健康面の課題だけでなく、家事・食事・入浴・排泄などの生活全般、さらには孤独や孤立といった社会的・心理的な課題まで、対応すべき問題は多岐にわたり、その背景は一人ひとり異なります。その人らしい暮らし方や日々の様子など、高齢者を取り巻くさまざまな課題について、実際に各家庭を訪問し、生活を支援するヘルパーから、サービス提供責任者を通じてケアマネへと情報が集まります。
90歳代の認知症がある、ご夫婦二人暮らしの方がおりました。夫の体重がどんどん減ってきていました。食べ残しも無く捨てられている様子もないため、何か病気なのかと考えていたところ、ヘルパーさんからの報告で夫の分を妻が食べていたということが分かりました。ご夫婦お二人の関係性をよく知るヘルパーさんが食事の場面に訪問して下さり、事実が確認できました。そこからは訪問時間をずらしたり、メモで夫の分・妻の分といった工夫を重ねていただき、夫の体重は以降減ることはなくなりました。私は難しく一人で考えすぎていました。生活課題は、日々生活に寄り添っているヘルパーさんから意見をいただく必要性を学びました。
訪問介護員(ヘルパー)の役割とチームケア
居宅介護支援において、ヘルパーさんの役割は大きいです。例えば、高齢者のご自宅での物の配置から汚れ、臭い、家族が訪問した形跡などをいつも見つけてくださいます。その小さな気づきの積み重ねによってリスク管理やこれからの生活課題がみえてくることがあります。また、居宅介護支援を通じてヘルパーさんとも顔がつながって、小さな町だからこそ移動中に出会うことも多く、個人情報の取扱いに留意したうえで、利用者さんの状態を確認することもあります。特に、緊急時など管理者やサービス提供責任者さんの連絡を待たずに情報を頂けることも何度か経験しました。社会資源の少ない町だからこそ協力しあい、時間差なく情報交換が出来るようになっていくと、多職種連携・チームケアというかっこいい言葉は似合わないのかもしれませんが、高齢者にとってより良い支援のチームが編成されていきます。現在、そうしたヘルパーさんや介護職員さんと多職種で関りが持てるように、町の中で学びと横のつながりを作っていく自主的な取り組みが進行中です。
小さい街だからこそ学びも多職種が連携して
現在、チームケアを実践している町内の訪問介護、通所介護、訪問看護、居宅介護支援の事業所が中心となり、法人・事業所を越えた研修会を実施しています。きっかけは、BCPに関する研修を合同で企画したことで、実際に災害時などで人手が不足した際にお互いに協力しあう体制づくりも整えてきました。マンパワーさえあれば、災害時でも利用者を支えられ、事業の継続も可能です。デイサービスで入浴介助を行うにしても、担い手がいなければ提供できませんからね。
研修会では、それぞれの事業所が持ち回りで企画を行い、講師の役割も担います。輪番に担当することで、それぞれの事業所の専門性や持ち味を生かすことが出来ますし、分担により企画運営の負担も軽減できます。今年で2年目の取り組みとなりましたが、当初は有志の4事業所15人程度から始まった研修も、自力では研修の開催が難しかった小規模事業所も参加して、現在では6事業所の有志によって運営されています。(下記、事務局レポートも参照ください)
昨年度実施したBCP研修では、町内の地図を広げ、危険箇所のマッピングを行いました。特にヘルパーさんからは「この坂は大雨で水が溜まる」「ここは車が通れなくなる」といった、日々訪問しているからこその情報を集めることができました。
こうした利用者の支援に関わる研修での学びは、明日からの実践に活かすことが出来て、サービス種別をこえた顔の見える関係が構築されていきます。ヘルパーさんも研修内容に興味があれば、忙しい中でも積極的に参加してくれるようになっています。かつて、福祉に興味を持ってくれて、介護職になった方が、知識や技術が不足しているために、支援そのものが「怖い」と感じ、離職してしまった方がいました。だからこそ、介護の専門職として「もう少し続けてみようかな」と思える人が増えるように、学びの機会が身近にあるといいなと思っています。学んだ結果、知識や技術がつくことで怖さがなくなり、研修での出会いから、横のつながりも広がると、さらに自信がつき、出来ることが増えていきます。こうした経験を重ねることで、介護福祉の専門職としての面白みも感じられるようになっていけるのではないでしょうか。
これからも共に!
ヘルパーのみなさん。いつも助けていただき本当にありがとうございます。利用者さんと信頼関係を築く早さと深さに感銘しております!現場のケアでお忙しいとは思いますが、担当者会議に出席いただけますか?そして、私たちのケアプランにご意見をいただけませんか?そしてこれからも一緒に学び、成長していくことが出来るように共に頑張りましょう!
事務局レポート
いつでも仲間と学べる知恵のたまり場~身近な地域での学びと実践の循環が、介護福祉の専門職にもたらすもの
―神奈川県介護人材確保対策推進会議「事務局取材」から(2025年11月)
湯河原町内にある介護サービス事業所の有志が中心となり、令和5年度から「多職種合同研修研究会」という学びの機会づくりを行っている。現在は6つの事業所が連携して、持ち回りで研修の企画と運営を担い合い、年間を通じてBCPなどのテーマに沿った研修会を実施している。研修のスタイルは、直接対面して話し合い、学び合う「集合型」研修を採用している。特徴的なのは「研修企画持回り制の夕方1時間限定」であること。こうすることで原則全員が参加でき、年間を通じて無理なく継続した学びができるように工夫されている。令和7年11月の夕方に行われた研修では「感染症まん延防止とBCP感染症」をテーマに、前半は当番である訪問看護ステーションの看護師から「ノロウイルス感染症の基礎知識」の講義の後、各事業所の感染予防対策とまん延防止の取組みについて情報交換が行われた。後半は、感染症発生時のBCPの具体的な対応や連携の実際について、参加した事業所の取り組みを報告し合い、日頃の実践に繋げていくための話し合いも行われた。限られた時間の中で行われる演習・グループワークはメリハリがあり、なるべく多くのメンバーが発言出来るような進行役の配慮もあって、時に笑いあい、うなずきあう温かい学びの場が作られていた。
グループワークで悩みを語り、聞き、労いあって、次の研修でまた会う時まで仕事を頑張ろうと思える。身近な地域での学びと実践の循環は、専門職にとって欠かせない、いつでも仲間と学べる、知恵のたまり場である。
